《 お仕事アーカイブ #1 》モスバーガー トレーマット

ブログが新しくなった機会に、これまでの仕事のことも少しずつ書いていこうと思います。

ホームページに載せる画像を整理しながら「そういえば、この仕事の時は…」と思い出しつつ「ひとつひとつの仕事のこと、これまで具体的に書いたことってなかったな」と。
こちらの記事で、私がどのように制作したかを知っていただく一助になれば幸いです。

1回目は「モスバーガー トレーマット」です。


こちらはイラストコンペ「ザ・チョイス」に入選した私のイラストを見てくださった制作会社の方から依頼をいただきました。
「ザ・チョイス」は雑誌「イラストレーション」主催の誌上イラストコンペ。イラストレーターの登竜門的な存在であり、たびたび挑戦するもなかなか入選に辿り着けない数年を経てやっと入選したのが2000年のことです。その時の入選作がこちら。藤田新策さんの審査の回でした。


ハワイで撮った写真をもとに風景画を描いて個展(Holiday in Hawaii)を開催した直後で、個展のために描いた絵をそのまま応募しました。風景画をまとめて描いたのはこの個展が初めてで、それが思いのほか、自由に好きに描けたので「この絵ならもしかして」と手応えを感じつつ応募したことを覚えています。

さて、モスバーガーの仕事。のびのびと好きに描いた絵が入選して、それが仕事にも繋がった!というのは想像を超えたとても大きな喜びで、それまでもイラストの仕事はしていたのですが、このとき「ようやくスタートラインに立てたのかも」という気持ちになりました。そんなわけで、これはとくに忘れられない仕事なのです。

面白いのが、サラダやゼリーを描くきっかけとなった入選作に特に食べ物など描いていないところです。デザイナーさんからは「あの絵のような爽やかさが欲しいです」とリクエストをいただきましたっけ。夏らしさと、爽やかさ…それを感じていただけての依頼とは嬉しい限りです。しかし、改めて思えば、デザイナーさんも勇気がいったことと思います。仕上がりの具体的なイメージは無いうえでの依頼なのですから。

コンペ入選作はキャンバスにアクリルガッシュで比較的こってりと描いたのですが、メニューは水彩でさらりと描いています。画材や仕上がりイメージについても、ラフスケッチの段階でデザイナーさんと共有し、やりとりをしながら進めました。

さらりと描きすぎると、伝えたいディティール(コーンフレークやフルーツ、チキンなど食材の質感)が伝わらないので、水彩で描いた上から、ところどころ色鉛筆で細かな陰影やタッチをつけました。「爽やか、涼やか」と同時に「おいしそう!」なのも、言うまでもなく大事ですものね。

下地になっているスケッチブック、フードはひとつひとつ別々に描き、原画をそのまま納品し、スケッチブック上のイラストや文字のレイアウトはすべてデザイナーさんにお任せしました。スケッチブックのブルーの影などけっこう繊細だったのですが、これもちゃんと再現されていて、仕上がりの実物もとてもきれいでした。(ちなみに描き文字は私のものではありません。涼やかな文字ですね。)

モスバーガーのマットは目にしていただく機会も多かったため、知人から「見たよ」と言ってもらうことも多く、また、この仕事をきっかけに「食材、料理、メニュー」などの仕事もたびたびいただくようになりました。

私は食べることが大好きなので、食事にまつわる仕事は楽しく、得意な分野のひとつです。
実物に忠実に、そして実物以上に…と言いますか、写真には無い表現がプラスできるのもイラストならではの魅力だと思っています。それは食材やメニューが持つ雰囲気(この場合は爽やかさ、涼しさ)や美しさ、おいしさなど。「つるん」や「サクサク」「ふわふわ」などをリアルにイメージしながら描くと、それが美味しい要素として絵に反映される…と信じています。

そしてこちらの仕事から20年以上が経った今、メニューイラストの画材はiPadを併用することも多くなりました。より細かいタッチもつけることができるようになりましたが、基本はやはり手描きです。100%アナログ以上にアナログらしい魅力や効果が出るように心がけつつ、お腹を空かせながら描いています。