前回は「お茶漬け」だったので今回は「オムレツ」です。
こちらは石井好子のエッセイ「巴里の空の下オムレツのにおいは流れる」の表紙イラスト…と言っても展覧会のために描いたもので、じっさいに出版されているものではありません、残念ながら(笑)。

展覧会っていうのは朝ドラの絵を描いたのと同じ、ピンポイントギャラリーの年に1度の企画展。えーと、これは2016年ですね。この時のお題は「わたしの一冊、あなたへの一冊」で、好きな本の装丁イラストを描く企画でした。
好きな本を1冊となると迷いますが、中学生くらいの頃からこれまで何度となく読み返した、こちらの本にしました。風景をペンで描きたいと思っていたので、ちょうど良いタイミングでもあり…というより「もう自分の一部みたいな本!」と勝手に思うくらいですから、こちらを選びました。
私は外国に憧れ続けるコドモだったので、小学生のころは「世界の不思議遺跡」みたいな本で見るインカ帝国の遺跡とかナスカの地上絵とかに胸踊らせ、もうちょっと大きくなると俄然ヨーロッパへの憧れをモリモリと育てていきました。なかでもやっぱりパリ!電車の中吊り広告でたしかアサヒグラフだったか何か…のパリ特集の写真など見た日にゃもう釘付けで、体中が熱くなるくらいでした。
こんな調子なので、家にあった母の「巴里の空の下〜」は、それこそ暗記できるくらい読みました。料理エッセイだけど、行ったこともないパリの暮らしや匂いが感じられるのが素晴らしかった。最初のほうに、ロシア人のマダム(パリのアパートの家主)がハムの脂身を炒めてその油でオムレツを作った話が出てくるんですが、その味までありありとイメージできて、もう私は何十回もそのオムレツを食べてる(もちろん脳内で)というぐあい。
さてさて、絵ですね。これはGペンにインク(パイロットの証券用インク)をつけて描き、水彩で着色しています。Gペンで絵を描いたのはこれが初めてで、本番前にはペンの紙へのひっかかり具合に慣れるようにストロークの練習などもしました。ちなみに紙はアルシュ。カリカリとした描き味が気持ちよく、乗って描けました。
絵にしたのはもちろんパリの屋根裏部屋。筆者が下宿していた部屋はもっと広々していたかもしれないけど、やっぱり「屋根裏部屋」になんとも言えない情緒を感じます。テーブルの横の椅子に掛けてあるのは筆者の毛皮。で、その毛皮をまとって歌ってるのが裏表紙です。石井好子の若い頃のステージ写真を見たことがありますが、たしかこんな衣装だった…というおぼろげな記憶を元に描きました。
今は朝ドラ「虎に翼」の寅子が時代を切り拓いた女性として描かれていますが、もちろん、寅子だけじゃなくいつの時代にも自分の道を信じて突き進んだ女性たちがいるんですよね。石井好子もそのなかのひとりだったのだと思います。シャンソンを歌いたくて独りでパリに行くなんてその勇気と度胸たるや。

こちらは、家にあった本。ずいぶん年季が入ってますね。今は実家から私の手元にやってきて本棚にそっと収まってくれています。
