「サザエさん」とわたし

4コマ漫画の「サザエさん」との出会いはいつだったか…子供のころ、近所の本屋さんで手に取って、買ってもらったのが最初だったと記憶しています。たぶん小学2年生か3年生?それくらいのころじゃなかろうか。

「サザエさん」はすでにテレビのアニメで見てたから「えー、テレビだけじゃなくてこんな漫画もあるんだ!」とサザエさんにワカメ、カツオの描かれたピンクの表紙の本を手に小さく興奮しました。

本を開くと、中は色あざやかな絵本とは違って線画だけで、その線の色がページが進むにつれグリーンからマゼンダ、ネイビーに変わるのも、1ページに1作のレイアウトも「なんだか大人っぽいな」と感じて、手に入れたのがすごく嬉しかったのも覚えています。姉妹社という社名もカッコいいなァと思ってました。それから、少しずつ本が増えていくと、何冊も並べて表紙を眺めては、ひとりで「この中で私がいちばん好きな絵はどーれだ?」なんてやってました。こんな調子ですから「大きくなったらサザエさんみたいな漫画を描く人になる!」と、当然のごとく言っておりました、はい。

…と、ここまでですでにコッテリと「サザエさん大好き、だいすき!」の想いを溢れるがままに書いていますが、そうです、サザエさん大好きです。

あぁ、それなのに大人になると寂しいことに、つねにひもとくことも無くなってしまったのですが、日々フトしたときに「あ、今の私はサザエさんのあの漫画と同じだな」などと思うことはけっこう頻繁にあるのです。私の中にはしっかりサザエさんが住んでいる。

で、昨日はコンビニで週刊誌スタイルで販売されている「サザエさん」がたまたま目に入ったので買い求め、久しぶりにサザエさんの世界に浸りました。やっぱりめちゃくちゃ面白いです。声を出して笑ってしまうこともたびたびありました。



面白いのはもちろん、私がとくにサザエさんを好きだと思うところは、漫画の中の小道具や背景が細かく描写されているところです。直接、話とは関係ない部分で…たとえば、波平に文句を言いながらお茶を淹れているフネの手元のお茶道具とか。「あー、うちの急須と似てる」なんて思いながら見るのが楽しいんです。これは「サザエさんうちあけ話」でも長谷川町子が「私はこまごま描き込むので、原稿を描くのに時間がかかる」と言ってますね。

*表紙カバーも無くなってだいぶくたびれてしまった「うちあけ話」。今読んでも何回読んでもおもしろい*

2016年に板橋区立美術館で開催された「よりぬき長谷川町子展」は見応えたっぷりでしたが、町子センセイがたしか中学生くらいのころに描いた絵なども展示されていました。そこですでにサザエさんに通じる魅力は花開いていて、町並やそこで暮らす人々の日常が細かく描写されていて唸りました。観察眼もすごいし、それを描く力もすごい、天才だったんだな…。それに、描いていること自体を心から楽しんでる感じも伝わってくる。町子先生、ブラボー!

…と、ここで自分のことを持ち出すのは非常に気が引けますが、私もカットイラストを描くときには背景を入れることで、その場の気配などが伝わるといいな〜と意識したりしています。これは「サザエさんの教え」(?)が形になった点のひとつかな。

長谷川町子はすごい作家である一方、繰り返し読んだ「サザエさんうちあけ話」には、描き手としての本心や葛藤などが飾らずに語られています。なかなか思うように描けないこともある、長期のスランプも定期的にある…などなど。こちらには、これまたおこがましいけど、親近感を感じずにはいられません。

「これからも、ずっと心にサザエさん」。そうつぶやくと、なんだかすごくほっとします。「サザエさん」は私には変わらないよりどころ、お守りみたいな存在だと改めて思いました。

*こちらは、ブログ「ちーずのつぶやき」に掲載したイラストです。「ちーずのつぶやき」は作家の関千里さんが
文章を、私がイラスト+ひとことを描いて、作ったブログです。ぜひ下記リンクからご覧ください!*
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