2024年11月

  • ピアノの音が聞こえる?ー「赤瀬川原平の名画読本」を再読して

    頭の中にいつの間にか住みついた言葉、ってのがあります。美辞麗句とか格言とかじゃないけど、時々ふっと浮き上がってくる。

    当然、絵にまつわる言葉もその中にはあって、そのひとつが「ピアノの音なんてぜんぜん聞こえてこない」というもの。これは赤瀬川原平がルノワールの「ピアノによる少女たち」という絵を解説した一節です。ここでは「名画」と言われるこの絵がけちょんけちょんに評されてます。

    これは20代のころ、出会った本の中で読みました。西洋絵画(おもに近代)の「名画」を取り上げて、それを「自分はこう見てる」と著者の視点で解説していく本だったのですが、これが面白くて面白くて「目からウロコ!」と感動したんですよね。

    この本、たぶん今でも実家のどこかにあると思うのですが、感動したわりには題名も忘れてしまい、ルノアール以外にどんな画家が取り上げられていたか?も、うろ覚えなくらいだったんですが、先日ふと気が向いて「もう一度読みたい」と検索しました。「赤瀬川原平の名画読本」という本でした。(今はこういうの、ちょとした手がかりですぐ分るのがありがたい)

    で、さっそく近くの図書館で借りて読みました。30年ぶりかな?今読んでもすごく面白い、共感します…というか、「この本に多くのことを教えてもらったんだな」と感無量でした。表面的には忘れてしまったことが多いけど、すごく影響を受けていたんだなと。若くて暗中模索だった私には沁み入るような言葉の数々だったんだろうと思います。

    ルノアールに話を戻すと…本は全部で15章、15枚の絵が取り上げられてますが、その中で辛口批評なのは2枚だけ、件のルノアールと、アングルの「泉」に対してだけです。(称賛する絵がほとんど。その言葉も豊かで素晴らしい)

    ルノアールのをもう少し引用すると

    “下手な絵である。色が汚くて、筆先が説明ばかりしている。ピアノの音なんてぜんぜん聞こえてこない〈中略〉この絵は下手なだけで、どこといって面白くもなく、鮮やかなところは何もない”
    (「赤瀬川原平の名画読本」赤瀬川原平著 より

    この後、具体的に「どこがどう汚いのか」という指摘が続き、そこから画家が社会に迎合すること、常識や見栄との馴れ合いの怖さへの言及となるのですが、当時の私には「ピアノを描いてるのにピアノの音が聞こえない、そんな絵はダメなんだ」というメッセージが何よりも心に残ったのです。



    もう少しさかのぼって思い出話を続けると…とにかく多くの展覧会を見に行っていたティーンエイジャーのころは当然ルノアールもいろいろ見ていました。ふくよかすぎる裸婦は好きじゃなかったけど「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」には「わー!」と高揚した気持ちを覚えてます。キラキラした光が差し込んでるように、そこだけパッと明るいように感じた。(赤瀬川さんも「ムーラン」は「まあいい」と言ってるので、ちょっとホッ・笑)

    いっぽうアングルの「泉」。これは西洋美術館で開催されていた「アングル展」で実物を見ました。当時中学生の私は、赤瀬川原平が言う通りそのままの反応で「うまーい」「水もすごーい」「つるつるー」と、絵として「きれい!」だと感じ入った記憶があります。たしか図録も買って帰ったんじゃなかったかな。それが、この本では「風俗営業の入口にぴったりの絵」ですと。あらら。

    また、この本には絵を描く楽しさを思い出させる描写も多く、それが今の私にはいちばん響きました。

  • 池袋モンパルナスとアトリエ

    練馬区立美術館で開催中の「野見山暁治展」を見てきました。野見山氏は練馬区にアトリエ兼住居を構えたので、縁の地での追悼展でした。でも、若い時は池袋モンパルナスに住んでいたとのこと。池袋モンパルナスといえば熊谷守一がまず頭に浮かびますが…私、野見山暁治の絵はたぶん初見です。

    小規模な展示でしたが、面白かったです。大きいキャンバスに油絵具が踊っているのを見ると、小さいことでチマチマと悩む自分が浄化されるような気持ちになります。ヒョイとつまみあげられて、少しだけ俯瞰したところから世界が見渡せるような感覚というか。絵っていいな…と、こんな時に思います。

    野見山氏のインタビュー映像も展覧会の見どころで、そこで詳細に紹介されていたアトリエにも目が釘付けになりました。アトリエ…なんて良い響きなんでしょう。どんな仕事場でもそれを見るのは面白いけど、画家のアトリエへの興味はやっぱりちょっと別格です。映画でも、写真ででも、画家その人が反映されたようなアトリエが見れると心躍ります。

    *美術館にはほんの一部、アトリエが再現されていました

    野見山氏のアトリエは、練馬と糸島(あっ、これも今の朝ドラつながりだ)2か所にありました。糸島のほうが広そうでドラマチックな建物だけど、私は練馬のほうが好きだったな。より生活と一体になっているほうが楽しそうに感じてしまいます。

    さてもうひとつの縁の地、池袋モンパルナス。戦前にこの芸術家村があった場所は、じつは今の私の部屋のすぐ近くです。何も知らずにたまたまこの地に住むことになったのですが「せっかくならいろいろ知りたい」と、現存するアトリエ付きの家を訪問する町歩きの会に参加したこともあります。その古いしゃれた平屋には大きなキャンバスを運び出せるように細くて背の高いドアが付いていたり、アトリエといえばイメージする吹き抜けの大きい空間があったり、「憧れちゃうわ」の世界が繰り広げられていて、拝見できたのは貴重な機会でした。(その家は今でも建築家夫妻が事務所として使っていらっしゃる。うらやましい!)

    アトリエとか、画材店とか、「絵」まわりのことが好きだから「絵」が好きなのかもしれません、私。ま、ミーハーなんですね。でも楽しい要素は多いに越したことはない。しばらくその楽しさの感覚を忘れていましたが、それを追うのもいいじゃないか。まずはスモックでも縫いますかね(うそです)。

    *うちの近くの図書館には「池袋モンパルナスコーナー」もあります。
    そうでした、セツ先生もここに住んでたんでしたっけ。




  • 星由里子の着物姿 @「世界大戦争」

    過去ブログの「着物トーク」再掲その4。今回は「世界大戦争」です。2018年に池袋の新文芸坐で「宝田明映画祭」が開催されました。朝ドラ(またまた朝ドラ由来です)の「カーネーション」ですっかり宝田明ファンになった私、当時、映画祭の全上映作品を見に通いました。お世辞抜きでめっちゃ面白くて忘れられない映画ばかりでしたが、その中で着物も見どころだったのが、こちらでした。

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    映画「若大将シリーズ」のマドンナ「澄ちゃん」役の女優さん、と認識していた星由里子。いつもオシャレでかわいい澄ちゃんが、時にパンナムのグランドスタッフ、またある時はワイキキのデパガと時代の最先端の職場で活躍するのを見るのも、若大将シリーズの楽しみのひとつでした。

    先週、新文芸坐で上映された「世界大戦争」(1961年)で初めて澄ちゃん以外の星由里子を見ました。
    この映画、なんと第三次世界大戦が勃発して人類が滅亡してしまうというストーリー。やっと平和と豊かさを取り戻した東京の日常が核戦争に飲込まれてしまうまでを、ある家族の目を通して描いています。その家族の長女を演じるのが星由里子。これがもう、なんともかわいくて可憐なのです。
    もちろんふつうの洋服姿でも登場しますが、印象的なシーンでは着物姿なのが意外でした。ちょっと大仰なタイトルとはミスマッチというか。

    映画の序盤、家で宝田明演じる婚約者を出迎えるときは普段着の着物。ピンクの木綿の着物に赤い半幅帯(元気な文庫結び)、その上に花柄のエプロン。めちゃくちゃお似合いでかわいい!エプロンで手を拭きながら甲斐甲斐しく動く仕草も板に付いてます。まだ二十歳そこそこ、って役どころ、昭和30年代当時はお嬢さんの普段着としての着物もまだまだ健在だったんですね。

    結婚の申し込みリハーサルのシーンで、父親(フランキー堺)の真似をするのもかわいかったなぁ。婚約者(宝田明)とのやりとりにほのぼの。彼もスーツで帰宅後、すぐに着物に着替えます。若い2人がくつろぐ時は着物、ってのがちょっと前(と言うと語弊があるけど)の東京のスタンダードだったなんて。

    やがて戦争の予感が強くなる終盤で、デートに着ていくのがバラ柄の訪問着。「もしかしたら会えるのはこれが最後かも」という気持ちがあるからこその特別なオシャレ。

    白地に大輪のバラがくっきりと染められた訪問着、バラの赤のグラデーションにはところどころ金色も入ってます。帯は朱と金の大きな亀甲柄、帯締めは紅白。お母さんも「一張羅の訪問着」と言っていただけあって、まさに正装!花嫁衣装的な意味も含めたセレクトなのかな。衿はキッチリと合わせて、ほとんど抜かずに着ているのも、この時代のお嬢さんらしさを感じます。

    貧しくはないけど特に裕福でもない、ごくごく普通の家の娘さんなのですが、訪問着(しかも若い時しか着れない柄)一式を持ってるっていうのも時代ゆえなんでしょうか。「これくらいは持たせてあげなきゃ」って、人の良いお父さんが頑張って買ってあげたんだろうな…せっかくの華やかな訪問着を着てる時に、どんどん悲しい結末に向かってしまうという対比。着物も映画の中で大切な役割を演じているように思いました。

  • LINEスタンプ「伊勢うどんでいこう!」

    前回、伊勢うどんのポストカードを紹介したので、伊勢うどんの絵をもう少し。
    今回はLINEスタンプを紹介します。

    *ギャラリーページでもくわしく載せています→LINEスタンプ

    こちらも「伊勢うどん友の会」プロデュースで制作しました。うどんくん、うどんちゃんがいろんな表情を見せてくれています。

    伊勢弁…というか三重県らしい言葉も取り入れています。「しあさって」は伊勢では「ささって」と言うそうです。他にも「ごうわく!」とか「だんない」とか。(上の一覧から探してみてくださいね)

    自分ではこちらのハードボイルド風味(?)のイラストも気に入ってます。
    もちろん、スタンプは絶賛発売中です。
    *こちらから購入していただけます。ご贔屓にどうぞ!→LINEスタンプ「伊勢うどんで行こう!」