《 お仕事アーカイブ #2 》 ドゥ マゴ パリ カフェメニュー(ブックレット)

前回に続きメニューの仕事の紹介です。
こちらは2021年の「Bunkamura ドゥマゴパリ祭」に合わせて制作されたブックレットです。

前回紹介したモスバーガーの仕事から20年。画材の幅が広がり、こちらのイラストは全てiPadで描きました。

クライアントさんからの要望としては、細かな部分までリアルに伝えるというよりはイメージ的なもののほうが良いとのこと。オシャレな雰囲気も出したいですね。ざっくりとラフな感じで仕上げることになりました。


手順としては、まずカフェで実際のお料理(フードと言うほうが一般的でしょうか)の写真を撮影させてもらい、それをもとにイラストを描きました。(料理の姿カタチや質感をより実感を持って把握するために、他の一般的なステーキやサラダなどの写真も参考にしました。)

ラフスケッチ、下書きから本番まで、ほぼiPadひとつで進めました。ちなみに、撮影させてもらった食事は全部、立ち会ってくれたクライアントさんと分けっこしながらとても美味しくいただきました。



iPadで描くといいことのひとつが、すごくラクに描けるということです…あ、この「ラク」というのはもちろん手抜きという意味ではなく、気分が楽でリラックスして描けるという意味です。失敗してもやり直しが簡単ですからね。お皿の丸い線をグルッと思い切って描けるのはiPadならではです。丸い線を描くのって私は苦手で、筆だとどうしても線が震えます(それが良い、というケースもありますが)。
やり直しがきくと言っても、無限に直してるとだんだん仕上がりイメージがぼんやりしてしまうので、そこはしゃきっと。数回描いてその中でいちばん良いのを採用するようにしています。

紙に水彩で描く場合(透明水彩を使い、あまり重ね塗りをしない描き方の場合)、絵の具のにじみや重なり具合は完全にはコントロールできません。もちろん、だからこその魅力は大きいし、偶然の要素も含めた仕上がりを優先する仕事もあります。(この場合も何枚か描いて良いのを選ぶことが多いです)
ただ、このメニューに関しては、iPadでざくざく描くほうがより自由で印象も強いものに仕上げることができると考えました。

このワインなど、かなりざっくりと描いています。ワインは必須オーダーではなく、「あれば楽しいかも」と打ち合わせの時に話をしたくらいのものでした。それも気負いなく描けて採用され、ブックレット全体がとても良い仕上がりになりました。クライアントさんからも喜んでいただけ、評判が良いと伺い嬉しかったです。

カフェメニュー(ブックレット)にも掲載されているカフェのテラスのイラストは販促用のトートバッグにもなりました。グリーンの色の部分は、私がグレーで塗った部分を、ドゥマゴオリジナルのグリーンをデザイナーさんが色指定しました。こちらのトートバッグも好評で、パリ祭の後、秋のワインイベントの際に増刷されました。

ドゥ マゴ パリのオープンは1987年。「パリ本店以外の初の海外1号店!」と、オープン時の華やかな評判はよく覚えています。雑誌「オリーブ」の表紙にもなりましたっけ。若いころは背伸びしてお茶しに行く場所でした。Bunkamura内の映画館「ル・シネマ」や美術館「ザ・ミュージアム」を訪れた後は「ちょっと贅沢してドゥマゴでお茶しようかな」と立ち寄ることもありました。鑑賞後の余韻とパリに憧れる気持ちが相まったときめきを思い出します。

そのBunkamuraも2023年に現在の場所はいったんクローズになりました。これから先、あのパラソルの下でくつろぐ都会のオアシスが同じ形で登場することは無いのでしょうか…。寂しいけれど、その姿を描く仕事ができたことはとても幸せでした。

ドゥ マゴ パリは場所を変え現在は「Bunkamura ル・シネマ 渋谷宮下」内で営業中とのことです。